先日の新聞に新型コロナ禍によりファツション業界はビジネスモデルに改革を迫られている。過剰生産や早すぎるセール、EC販売の台頭といった課題にどう対応していくべきなのかと。
デザイナーのアルマーニ氏も市場の需要をはるかに超える過剰生産やセールの前倒しなど病理ともいえる業界の慣習をリセットし、適正な状態にスローダウンする好機にしないといけないと述べる。
例えば季節をかなり先取して店頭に並べるのが慣例となり、夏に毛皮コート、冬に薄手のリネンドレスなどを売ることも珍しくなかった。また、新商品は3週間ほどで古いものとみなされ、すぐに別の商品に置き換わっていく。商品を買ってから着るまで半年以上もクローゼットしまっておくなんて馬鹿げている。業界のスケジュールや慣例を、価値観を見直すべきと氏は云う。
ファストファツションの台頭は業界に多くの影響を与えた。消費者に多くの商品を買わせようと過剰生産が慢性的になった結果、在庫の積み上がりやセールの前倒しを招き、業界として適正な利益が出ないのは当然であろう。氏は今こそ「スローファツション」に移行すべきだと提唱する。スピード優先をやめ、不要な生産を減らし、生地や在庫、物流の無駄を省く。セールも規律を守って適正な時期に実施する。消費者の視点をビジネスに持ち込むことにより環境負荷は減り、持続可能な形に転換できる。
「スローファツション」の実現には適正規模の生産、店頭にできるだけ長く並べ、陳列のリズムを実際の季節の移り変わりに合わせる。消費者が望んでいる状態を目指すには個別企業でなく業界のイニシアチブが無いと実現は不可能である。社会への責任感を意識したビジネスに取り組む企業を見極め業界への参加を期待したい。
文/島崎淳 (Jun Shimazaki)