日本経済新聞社が主要企業の経営者「革新力アンケート」で、自社に不足している革新力について「消費者ニーズをくみ取るマーケティング力」を挙げる回答が70%で最も多かった。企業がさらなる成長を果たす為には、時代に沿った製品・サービスを提供できる体制や仕組み作りが課題のようだ。
ここで最近の事例としては。サントリー社の角「ハイボール」のヒットに注目する。
このサントリー角瓶は、1937年に誕生し、70年以上変わっていない。
取扱店が2008年の1万5000店が2010年は13万店へと急拡大。
忘れかけていたウイスキーがなぜ今。小雪、管野美穂、井川遥がバーを切り盛りするテレビCMの効果もあるだろうが、今の時代、それだけでブームになるほど単純ではない。
この「なぜ」を解く時、若い消費者はウイスキーをどう見ているか、「古くさい」「おじさんの酒」「度数が強い」「料理に合わない」さらに問題は飲む場「1軒目で目にしない」「バーに行かない」かつては上司に連れられて2軒目のバーで飲んだものだが、今は1軒目で帰るかカラオケ。この“2軒目の酒”のイメージをいかに払拭するかが最大の問題とされたよう。
こんな時、角ハイボールと鉄板焼きを組み合わせた店の情報が入りここから1軒目で食事と一緒に楽しむウイスキーへ。ターゲットは30代。2008年に1万5千店舗の居酒屋に角ハイボールのポスターが貼られたという。これにより「食べながら飲むハイボール」の新しい飲み方が強く印象付けられ13万店舗に拡大。これによりウイスキーの新しい飲み方とその価値だけを訴求し続ける。たかがハイボールではあるが、消費者に新しい体験というシンプルな価値を提供したことが「消費者ニーズをくみ取るマーケティング力」に進む道筋を示しているように見える。
文/島崎淳 (Jun Shimazaki)