各社で定年を見直す動きが加速している。現在の60歳から65歳に引き上げるほか、「役職定年」の制度をやめる企業も増えつつある。これは入社年次、年齢で画一的に管理する人事制度から脱し、働く意欲と能力のあるシニア人材を活用して将来の人材不足に備える。
1980年代後半から90年代初めにかけてのバブル期入社組は現在、大半が50代。近い将来、彼らが一斉に定年を迎えると、業務を支えきれなくなる恐れが出てくる。これから60歳を超えても競争環境を維持して人材不足を補い、生産性を高める狙いだ。今までのように新人の採用を増減させるより元気で経験の豊富な人に長く働いてもらう仕組みのほうが合理的である判断のようである。
このようなシニアの活用は、世代交代という新陳代謝が進まない副作用との隣り合わせで、優秀な若手がポストに就きにくくなる恐れもあるが、年功序列を排除することにより若手だけなく60代も競争する環境になる。年功序列の制度基準、新卒一括採用が崩れていく転換期になっていくであろう。
文/島崎淳 (Jun Shimazaki)