先日の新聞に興味深い記事があった。日本企業は2005年から株主配当の伸びが社員給与の伸びを上回るようになった。株主価値重視の海外投資家を中心に配当水準を欧米並みに引き上げる声が強まった為である。
データによると付加価値に占める配当比率は2015年に8%と2000年から6ポイント上昇し、代わって低下したのが、社員の取り分(労働分配率)。2015年に74%と2000年から9ポイント低下し、業績の伸びほど社員に利益が分配されていない。株主分配が欧米の水準に近づき、社員への分配が置き去りになっている。一方、内部留保比率は2015年に11%。アメリカ4%、ドイツ7%を上回り上場企業の現預金も約100兆円に上る。内部留保の積み上げを抑えれば労働分配に振り向ける余地はある。
同時に付加価値を生み出せる人材をどう育てるか。問われるのは成果に応じた賃金と人材教育など人への投資が重要であると。人材投資の費用は2012年にピークの1991年の2割弱まで減っている。賃上げは給与のみならず教育投資と合わせ考えるべきであろう。
将来に向け貯めこんだ100兆円をどう使うか。
文/島崎淳 (Jun Shimazaki)