先日、日本を代表するブランドのワコールHDが希望退職の募集を行いこの2月に200人以上の退職に応じた。ワコールは24年3月期の連結最終損益で2期連続の赤字を見込む。
1990年代まで「ワンレン・ボディコン」に代表される女性に絶大な人気を誇った。その後デフレが強まる2000年代から低価格下着が好まれワイヤブラジャーからノンワイヤタイプを選ぶ消費者が増え、そこをファーストリテイリングが運営するユニクロの「ブラトップ」がシェアアップしていく。
若い世代はブラトップに飛びつき、新たな市場が形成される。ワコールも市場占拠の対策を打ったが強味としてきた品質にこだわるあまり、新しい消費の波に乗り切れない。また流通構造も主たるチャネルの量販店、百貨店の閉鎖が販売基盤が失われていった。
ブランドは「成長型」と「伝統型」に大別ができ若い世代や海外市場を取り込みダイナミズムを持つのが「成長型」で百貨店のように固定客に強いが新規顧客の開拓に弱いのが「伝統型」である。リストラを機に若い世代を含めたブランドの立て直しに動いている。
この苦境から得られる教訓は、成長期であっても健全な危機感を持ち、現状に甘んじないこと。そして時代の変化を読み取り、自己否定も辞さず経営の「リメーク」に取り組むことであろう。
その為にトップダウン、過去の成功事例にとらわれない組織年齢の若返り、プロジェクトコミュニケーションの強化が求められる。
文/島崎淳 (Jun Shimazaki)