素材の知識(繊維の種類)Ⅱ

- アパレル業界ニュース -
2017年01月16日

前回は、天然繊維の植物繊維についてご説明をしました。

今回は、動物繊維についてみていきたいと思います。

 

【動物繊維】

・毛(ウール)・・・家庭用品品質表示法で、動物の毛であれば全て毛と表示してよいことになっています。その中で大半を占める毛がウール(羊毛)です。そのため厳密には毛=ウールではありません。カシミヤ、アルパカ、アンゴラ、モヘヤ、キャメルも毛になります。

ウール同様、これらも毛の他に動物の名前の表示が認められています。

衣料に使用される毛の大半がウールです。ウールは弾力性があり膨らみがあり、シワになりにくいなどの良い点があります。何より温かみがあります。そのため、冬物衣料には欠かせない素材です。

最近は高級ウールと称されるメリノウールが多くみられます。

ウールの中でも産地により品質が変わります。きめ細かさ、肌触り、温かみなどに違いがあります。染色性が良く、色落ちもしにくいです。

デメリットとしては、水洗いすると縮んで固くなり、フェルト状になります。また、虫に喰われるため、保管する際に注意が必要です。

ウール

 

・カシミヤ・・・カシミヤはアジア大陸の寒暖の差が激しい内陸部の高地や山岳地方で飼育されている「カシミヤ山羊(Capra Hircus Laniger)」の産毛です。カシミヤは繊維がきめ細かいため肌触りがよく、さらにウールに比べても伸びがあるため着心地が良いのです。

カシミヤ山羊

・アルパカ・・・アンデス地方のマイナス20℃にもなる厳しい環境で飼育されています。繊維の中に空洞があるため軽く、保温効果に優れています。保温性はウールやカシミヤよりも優れています。ウールのような毛玉もできず、シワにもなりにくいのが特徴です。

アルパカ

 

・アンゴラ・・・アンゴラ(Angora fiber)は動物繊維の一種でアンゴラヤギ、もしくはアンゴラウサギの毛またはそれを織った布のことを言います。通用アンゴラは、ウールやナイロンなどと混紡され、コートやセーターなど防寒着用素材として利用されることが多いです。軽さはありますが、毛が落ちやすいデメリットもあります。

アンゴラヤギ アンゴラウサギ

モヘア・・・モヘア(mohair)は、アンゴラヤギ(Angora goat)の毛から作った織物です。アンゴラウサギ(Angora rabbit)の毛と同じという話もあります。主にスーツやセーター、ショールに使われます。

 

・キャメル・・・ふたこぶラクダというラクダのことです。旧ソ連南部、中国西北部、中央アジアなどに生息しています。ラクダには、ひとこぶラクダとふたこぶラクダの二種類いますが、衣類用につかわれるのはふたこぶラクダのものです。生産量は羊毛のわずか0.14%程度のため、きわめて希少な繊維で高級品です。

ひとこぶラクダ フタコブラクダ

 

・絹・・・天然繊維の中で、日本で生産される唯一の原料です。蚕の繭からとった動物原料です。軽くて丈夫、柔らかい、光沢感がありしなやかな風合い、保温性と吸湿性に優れているなどのメリットがあります。デメリットは家庭での洗濯が困難であること、シミになりやすい、光に当たることで変色しやすい点があります。

蚕 繭

絹

最後に、毛(獣毛)の特徴として、繊維の側面は、キューティクルやスケールと呼ばれる鱗片で覆われています。これが毛の繊維の最大の特徴でもありますが、人の髪の毛にもこのキューティクルはあります。すべてにスケール(キューティクル)があります。

スケール

毛をからませてフェルト化することを縮絨(しゅくじゅう)といいますが、これはキューティクルが互いにからんで解けなくなることでおきる現象です。石鹸をはじめとするアルカリ性の溶液にひたすとキューティクルが開いてこの現象が促進される性質があります。

収縮メカニズム

なので毛でできた織物は中性洗剤で優しく手洗いする必要があるというわけです。