今回は、半合成繊維についてみていきましょう。
まず半合成繊維とはどんなものなのでしょうか。
【半合成繊維】
合成繊維と再生繊維の中間的なもの。セルロースなどの天然高分子を化学反応させて異なった高分子とし、これを紡糸して作った人造繊維。
プロミックス、トリアセテート、アセテートがあります。聞きなれない繊維ですが、アセテートは衣料に使われることがあります。
天然物質と化学物質を混ぜて作られた繊維なので両方の特徴が生かされています。
・プロミックス・・・エレガントなフォーマル・ドレスやパーティ・ドレスなどに使われていました。現在はプロミックス自体製造されていません。プロミックス繊維は動物性たんぱく質(ミルクガゼイン)を30~60%とアクリル繊維の原料となるアクリルニトリルを結合して製造された繊維です。
ミルクガゼインは牛乳に含まれているたんぱく質ですがプロミックス繊維100gを作るのに牛乳が1.4リットル必要だそうです。
シルクに似せた繊維で、シルクに似た風合い、光沢があります。(シルクもタンパク質からできています)
東洋紡㈱が製造していたそうなのですが、2004年に生産を中止したようです。
プロミックスは摩擦に弱く、アイロンをかけるのも大変です。
プロミックス以外でも、前回説明したレーヨンやキュプラなど再生繊維でシルクに似た風合いの素材もあるので、代用できているのですね。
もし、プロミックス繊維を使った衣類をお持ちの場合は、クリーニングに出すことをお勧めします。
トリアセテート・・・木材パルプのセルロース成分に酢酸を作用させて(=アセチル化)作る繊維です。セルロースは天然成分であり酢酸は合成品であることから、半合成繊維に分類されます。
シルクのような光沢をもち、シワになりにくい素材で、ドレープ性があります。保温性や弾力性に優れているのも魅力でしょう。
トリアセテートは、そうした特性に加えて耐熱性や形態安定性が改良されているのが特徴です。
また、トリアセテートは医療の現場でも使われており、トリアセテートを使った中空糸膜は人工透析膜や逆浸透膜として活躍しています。
デメリットとしては、車の排気ガスなどの酸化窒素ガスにより、変色や退色を起こすことがあります。
また、除光液や整髪料などにより、繊維が溶けて硬くなったり穴が開いたりしますので注意が必要です。
染みの種類によっては染み抜きの際にシンナーを使う場合がありますが、トリアセテートはシンナーで溶解するので、絶対に使ってはいけません。そのような場合はプロのクリーニング店にご相談することをお勧めします。
洗濯方法としては、40℃以下のぬるま湯を使って優しく押し洗いしてください。アルカリ性に弱い性質があるので、アルカリ洗剤の使用は避けた方が良いでしょう。
市販の洗濯用洗剤は弱アルカリ性が多いです。おしゃれ着洗い用の中性洗剤の使用をお勧めします。アイロンは当て布をして低温であててください。もともとシワになりにくい素材なのでアイロンはそれほど大変ではないでしょう。
・アセテート・・・木材パルプを主原料とし、パルプに含まれる繊維素を酢酸に反応させて作ります。上質のシルクに近い光沢や感触、発色の良さ、肌に優しいソフトな風合い、ドレープ性の良さが特徴です。
アセテートとトリアセテート製法がほとんど同じです。そのため、メリット・デメリットもほぼ同様です。
それでは、ここで、トリアセテートとアセテートの違いを少し見ていきましょう。
アセテートが水酸基の74%〜92%がアセチル化されているのに対し、トリアセテートは水酸基の92%以上がアセチル化されています。
このように、セルロースの酢酸化度(=アセチル化の度合い)の違いにより名前が付けられています。
トリアセテートはアセテートよりアセチル化の度合いが大きいため、より合成繊維に近い性質を持ちます。
このアセチル化により、親水性の水酸基が疎水性のアセチル基で置き換えられるため、水に対する親和性は低下するというわけです。
したがって、トリアセテートの方が水親和性は低くなります。
親和性が低下すると下記のような特徴が表れます。
・脱水が簡単で、すぐ乾燥する。
・水分が繊維にしみこみにくいのでシワになりにくい。
半合成繊維の特徴を以下にまとめました。
・さらりとした風合い
・軽い
・プリーツ性がある
・アセテートは強度がない
・アセテートはシワになりやすく、シワが取れづらい
絹は高価であるため、絹に似せた繊維の開発がとても進んだのですね。
安価で絹のような光沢のある洋服を着られたら、うれしいですものね。
また、品質表示を見る楽しみが増えました。
では、次回は繊維の種類の最終回。合成繊維についてみていきましょう。